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M女性がSMを楽しみたい、もっとその世界を知りたいと思っても、なかなかその一歩を踏み出すことは難しいのではないでしょうか? そんな貴女のためのコミュニケーションブログです。

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CASE2-1 ファンタジーとしてのSM 佳子の場合
■自分がMだってことは絶対に言えないですよ

「ちょっとすました感じに見られることが多いかな… お高くとまっているって思われているみたい」

そんな風に自己紹介してくれた佳子とは、このブログを開設し、十六夜に通うようになってすぐに知り合った。首都圏で生活をしていてOLをやっていると彼女は言った。年齢は20代後半。確かにテキストチャットをしていても、そんなちょっとクールな感じが伝わってくる。別にそのことを気にしていて「本当はそんな風じゃないのに・・・」みたいに思っている様子もない。あまり同世代の男には興味がないらしく、どう思われようがかまわないし、今は10歳以上年上の男性と恋人関係にあると教えてくれた。

「同世代の男は、物足りない・・・」

ちょっと突き放したように彼女は言う。
まあ、20代ぐらいの若い子に気に入られるっていうのは、この年齢になるとありがたい。若い女性が好きだし・・・。でも自分が若かった頃、同世代の女の子と切磋琢磨しながら、喧嘩したり、イチャイチャしたり、いい恋愛をしたという自負もあり、その意味も意義もこの歳になるとわかってくる。だから、若い女性が“20歳ぐらい歳の離れた男とつきあいたい”っていう言葉にはもうひとつ信用できないものを感じてしまう捻くれた気持ちもあったりする。・・・なので余計なことを言った。

「でもさぁ。20代の男って確かにバカで幼くてどうしようもないけど、そのくらいの同世代との恋愛っていうのもものすごく大事だと思うんだよなぁ・・・。こんなこと言うとオヤジくさいかもだけど・・・」

一応、自分でもこういう発言が若い世代にほとんど意味がないということは知り尽くしているんだけどいってしまう。すると佳子はすかさず切り返す。

「確かに、オヤジくさいですよw」

(あっ・・・!この娘、わかってる・・・ やるじゃないか・・・)

普通、こういうことを言うと大抵の女性は、

「いいえ、そんなことないですよ」

とか

「なるほど~」

とか、曖昧にフォローを入れてくる。でも佳子の場合はそれをせず、ストレートに返してきた。そう・・・、こういう場合、別にフォローはいらないのだ。そういう率直な若い意見を聞くのが楽しいのだ、それがオヤジなのだ。さすが、歳の離れた男性とつきあっているという彼女はそのへんの感覚をしっかりわかっているようだった。


「その年上の彼とはSMはしないの?」

と尋ねると

「興味ないみたいです。それに自分がMだってことは絶対に言えないですよ

という。今のところSMは興味だけで実際の経験はないらしい。チャットでいろんな人と話しているとこういうタイプの女性は多い。この佳子と似たプロフィールの持ち主とはけっこう何人も知り合った。中にはブログには載せないでほしいと言う人もいるので、佳子はその代表だ。

「SMを知ったきっかけは何? どうして自分をMだと思うの?」

僕がチャットで女性と話すときにからなず尋ねる質問をしてみた。

「同人誌系のコミックを読んで、ああこういう世界もあるんだって急激に惹かれていったんです。で、そういったコミックを読み漁るようになって、その中で縛られて命令に服従しているシーンを見て・・・。気がついたら頭から離れなくて・・・オナニーしちゃいました・・・。もう一日何回も・・・ 毎日・・・。もうアソコが一日中ジュクジュクしていて熱いくらいでした」

なんか色っぽい・・・。テキストなのに! もしかして僕は誘われている!? いやいや、ここは慎重に・・・。

「それじゃあ、そういう相手を探してこういうSM系のチャットに来るようになったの?」

「それが自分でもよくわからないんです。彼氏はいい人で尊敬もしているし・・・。でもそういうのとはまったく別にSMをしたいなって思っているのかな・・・。相手を探している・・・そうかもしれないし・・・、普段の自分とはまったく切り離された別の世界を生きてみたいって思っているのかも・・・」

なるほど・・・。SMは別腹ってタイプなんだな・・・。同人誌を作っている女の子や男の子が処女や童貞だったりすることも多いっていうのと似ているのかな・・・と考えを巡らせてみる。SMというものを非日常と捉えて妄想を楽しむという人は意外と多い。それで収まるならそれでもいいと思うし、そこから踏み出すと、実際は妄想とは違った現実的な問題がいろいろ生じてきて、決して憧れているSM世界のようなもんじゃないことを悟らなければならなくなる。そんなものは必要ないと考える女性がいても不思議じゃない。

でも佳子は今、そんなSM的妄想と現実の境で迷子になっているような気がした。


■海野やよいさんのお勧めの作品あります?

「踏み出してみたいって思う? なんかそういうアクション起こしてみた?」

「いえ、チャットで何人かと話はしてみたんですけど、『脱げ!』とか『逢いたい!』とかそんなのばっかりで、ちょっと幻滅していたところです」

よかった・・・。誘われていたわけじゃなさそうだ・・・。早まらず、慎重に行動して良かったぁ~(笑)。

「ブログで海野やよいさんっていう漫画家を紹介してましたよね? 海野やよいさんのお薦めの作品あります?」

実はこの質問は、意外と多くの女性からされてきた。女性の場合、同人誌マニアの腐女子は別として、実際にはSM系の情報を実際にネット以外で手に入れることは困難なのだと思う。本屋で購入するのも恥かしいだろうし、もちろんアダルト専門店などはひとりで入ることすら憚られる。なので意外に情報が出回らない。まあ、本当はそれが最初の一歩だと思わなくもないのだけど、佳子のようにまだリアルなSM世界に飛び込む勇気がない女性の場合は特にそう、情報が偏ってしまう。確かにネットに情報は氾濫しているんだけど、上質なものがまだネットには少ないのだ。SMに上質のへったくれもないと思われる方もいるでしょうが、実際には商業ベースにのったものは、それなりの品質の保証がされているという側面もあるのだ。

「お薦めかぁ・・・。それで僕の品位が問われてしまいそうで、ちょっと怖いな・・・。でも読ませて上げられないこともない・・・」

僕はそういってその方法を彼女に伝えた。あまり大きな声では言えないが、と言いながらブログに書いてしまうのもなんなんだけど、世の中、デジタル社会、ネット社会、さまざまなものがネット上でやりとりできるようになっている。僕も多少、その恩恵を受けている。ということで、実際に、チャットで知り合った何人かの女性には希望があれば、その方法というか、僕の持っているデータを彼女達も手に入れられるように、その方法を伝授した。まあSM系のコミック、海野やよい作品、比較のためにその他の作家の作品、あとはテキスト化されたSM系の小説のデータなど・・・。たぶん彼女達は手に入れることができたはず。この日は、それの方法を伝えて、後日感想を聞かせてもらうことを約束してチャットを終えた。


■ポルノじゃない小説とかもあるのでしょうか?

数日後、佳子からメールが来た。海野やよい作品、そしてSM小説を数冊読んだらしい。メールにはその感想が綴られていた。


佳子→尚人

尚人様
尚人さんの仰るとおり、海野やよい作品はいいですね・・・。他の作品とは違った視点が感じられて、共感しやすかったです。でも絵はなんか作品ごとにバラつきがあってちょっと読みにくかったです。

彼氏にどんどんM奴隷として調教されていく中で、主人公が変わっていく話にとっても惹かれました。見た目もどんどん変わっていくあたりがなんか、怖いような・・・、されてみたいような・・・。また彼氏がいるのに他の男に調教されて悩む主人公の話では、自分のことが描かれている様で、それにもドキドキでした^^。

小説も3冊ほど読みましたけど、こっちは暴力的というか、陵辱的な話ばかりで・・・。私の求めている世界とはちょっと違う気がしました。でも尚人さんが言っていたように、SM的な妄想というのは原則、こっちの話なんですよね・・・。こういうポルノじゃない小説とかもあるのでしょうか?
佳子  


なるほど・・・。彼女にとってはやはりSMはファンタジーなんだな・・・と僕は思った。あくまでも美しいSM世界を夢見ている・・・。現実の中で毎日、会社で働いて家に帰って食事をして寝る、そして週末は彼氏と過ごす。そんな日常とまた別の自分を夢見たい・・・。その夢が美しいSM的な淫夢なのだ。フランス書院文庫やマドンナ文庫に代表されるようなポルノ的で陵辱的なSM小説の世界とはまったく違う妄想を彼女は見たいのかもしれない。





■『O嬢の物語』って知ってる?

またその数日後、チャットで彼女と話す機会があった。

「『O嬢の物語』って知ってる?」

僕は彼女に尋ねた。「知らない」というファンタジーとしてのSMを夢見る佳子に、“これしかないだろう”というフランスの小説を僕は紹介した。この映画が日本で封切られた頃、世の中はフランスのソフトポルノ全盛であの『エマニエル夫人』も前年1974年にフランスで公開された。よく両者は比較されるが、『O嬢の物語』のほうがSM色が強い。まあ、翻訳者の澁澤龍彦氏という人物がこれまた曲者で、おもしろい話がいっぱいあるけど、それはまた別の機会に・・・。


O嬢の物語

・1954年 
・ポーリーヌ・レアージュ(Pauline Reage)
この作者は序文『奴隷状態における幸福』を寄せたジャン・ポーラン(Jean Paulhan)自身のものと目されていたが、執筆に関わっていたと一部で噂されていたドミニク・オーリーが1994年に自分が作者であると表明した。

・ドミニク・オーリー
Dominique Aury(本名アンヌ・デクロ Anne Desclos、1907年9月23日 - 1998年4月27日)は、ポーリーヌ・レアージュ Pauline Réage の名でも知られるフランスのジャーナリスト・小説家。


・物語
普通の若い恋人同士であったOとルネ。女流ファッション写真家のOは、ある日、ルネに連れ出され、ロワッシーの館へと送り込まれる。そこは送り込まれた女性は皆、調教によってM性を開花させていくSMの館だった。裸に剥かれたOは、体の各所に化粧を施され、首輪と腕輪により拘束される。館には妖しげな男たちと彼女と同じような女たちが住まい、女たちの体は昼夜を問わず訪れる男性に開かれている。この館では女は物でしかなく、沈黙を強要され、縛られ、鞭打たれる。また、通常使われる部分だけではなく、肛門までをも、ルネだけではなく見知らぬ男性にまで犯される。

これらの事、全てはOにとって屈辱的なことなのか?というと必ずしもそうではない。Oはそれほどまでにルネが自分を愛し、ルネが自分を完全に支配していることを理解し、その世界にふたりはともに酔いしれる。

ロワッシーの館での調教が終り、奴隷であるという印の指輪を携え、街に戻ってきたOは、既に以前の彼女とは違っていた。一部をのぞいて、普通の生活に戻った彼女に、ルネは兄とも慕うステファン卿を紹介する。ルネは敬愛するステファン卿と、Oを共有したいという。灰色の髪をしたイギリス人、ステファン卿は、こうしてOの主人となる。ステファン卿は、ルネのようにOを鞭打つ事も出来ない軟弱な主人ではない。Oはルネではなく、ステファン卿を愛するようになる。

ステファン卿もまたOを愛す。愛するが故に、ステファン卿はアンヌ・マリーの協力を得て、Oに彼個人の奴隷であることを示す刻印を施す。それは下腹部から絶えず重たくぶら下がる鉄環と、尻に施された二度と消す事の出来ない刻印。裸にふくろうの仮面をつけ、エジプトの彫像のような姿となったOは、鉄環に付けられた鎖でもって、パーティーへと引かれていく・・・。


・映画
1975年 フランスで映画化。
監督:ジュスト・ジャカン
キャスト:O嬢 モデル出身のコリンヌ・クレリー
O嬢の物語 [DVD]O嬢の物語 [DVD]
(2002/06/25)
コリンヌ・クレリー、ウド・キーア 他

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・日本語の書籍
O嬢の物語 (河出文庫)
ポーリーヌ・レアージュ (著), 澁澤 龍彦 (著)
O嬢の物語 (河出文庫)O嬢の物語 (河出文庫)
(1992/06)
ポーリーヌ・レアージュ、澁澤 龍彦 他

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「へえ~。読んでみたい・・・」

彼女は僕の説明がよっぽど面白かったのか・・・、あるいは自分の求めていた世界がそこにあると直感したのか・・・、その場でamazonで本を注文した。


■誰か私をO嬢のように愛してくれないかな・・・

よっぽどハマったのか、それから間もなく彼女から再びメールが来た・・・。



佳子→尚人

尚人様
すっごい良かった!
小説を読んだときはわからないことが多かったというのも実はあるんですが・・・、映画も見ました。コリンヌ・クレリーは綺麗ですねぇ・・・。私の憧れていた世界がそのまま映画になったようでした。

といっても、焼印はちょっとカンベンですが・・・。
女ってああいう風に綺麗になっていくって感じすごいわかるんです。

官能を知るとどうしてあんなに変わるのかしら?
でも、これってホントのことなんですよね。
私もこれほどじゃないですけど、
SEXするようになってから、雰囲気かわりましたもん^^。

男の人ってあんまり変わらないじゃないですか?

ああ、誰か・・・ 私をO嬢のようにしてくれないかしら・・・
あんなふうに愛されてみたいです・・・。

素敵な作品を紹介してくれて、本当にありがとうございました。
わたしもO嬢のようになって

尚人さんの前に現れるかもよ~^^
そうしたら、そのときは・・・
いろんな意味で・・・
お願いしますね^^
佳子  


ふむ・・・。いい刺激にはなったみたいだけど・・・、良かったのかな? また現実離れしたSM感を強固にしてしまっただけじゃないといいんだけど・・・。彼女は現実のSMの扉を開けるのだろうか? それとも、このままファンタジーとしてのSMを愛する女性として日常とファンタジーを行き来して生きていくのだろうか? ファンタジーとしてのSMを生きていくのだとしたら、僕の前に現れても、僕は彼女をがっかりされることになりそうだなぁ・・・。お願いされても・・・(汗)。

「なによ! 全然、ステファン卿と違う!!」

とか言われそう・・・・・・。
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