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M女性がSMを楽しみたい、もっとその世界を知りたいと思っても、なかなかその一歩を踏み出すことは難しいのではないでしょうか? そんな貴女のためのコミュニケーションブログです。

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CASE1-1 露出癖を持つゆきこ ~出逢い~
■そんなこと初対面で聞くんですか?

SM系チャットルーム「十六夜」に出入りするようになって、3回目ぐらいの時、ゆきこは僕のルームを訪れてくれた。

初心者M女さん! いませんか? http://masterswords.blog.2nt.com/ ここに私のプロフあります。読んで共感できたら雑談でもしませんか? ときどきここに来ます。


そんな前書きを読んで、プロフィールを走り読みした後、彼女は入ってきてくれたのだ。

簡単な挨拶をした後、僕は彼女に尋ねた。

「僕のプロフ、読んでいただけましたか? ゆきこさんはどんな方ですか? SM経験者の方ですか?」「どんなことされてみたいって思っているんですか? 願望とかあります?」
「今日はどんな話とかしたいですか? なんか聞きたいことがあれば言って下さいね」

チャットルームは基本、男性がいる部屋に女性が入ってくるため、初心者女性は匿名性は守られているとはいえ、どんな相手が何を言ってくるか、ほとんどわからないまま、そこに入っていく。当然、かなりの勇気が必要なはず。なので、僕は僕なりに気を使い、紳士的に、彼女のSM的嗜好を探る質問と、話しやすそうな話題を探そうとしていた。だけど彼女の反応は、かなり重い、なかなか話が前に進まない。そんな言葉少ないやりとりが15分ぐらい続いただろうか…。ゆきこは言った。

「こんないきなり、そんなこと初対面で聞くんですか?」
「普通、もっと話してから、そういうことは話すんじゃないですか?」


彼女は、面食らっているというか、なんか怒っているみたいな気がした。
(え~っ!? だってここはSM専門のチャットだし…、僕だって普通のチャットだったら、そんなこと聞かないけど…。ここは、そういう普段あんまり人前で言えないようなことを、話して楽しもうっていう暗黙の了解で成り立っているわけだし…)

僕の方が面食らってしまった。こう見えても僕は、まだインターネットで日本語のwebサイトがほとんどないような時代からネット利用しているし、それどころかパソコン通信時代にだって様々なコミュニティに参加して活動してきた。そんな中で、いつもネットコミュニティにおけるマナーやルールには気を使い、それなりの評判もいただいてきたし、その類の書籍も書いている。かなりショックを受けた。自尊心を傷つけられた(ちょっと大げさ)。

「バカヤロー!! 俺にネットでのマナーやルールを説教するか!? それを作ってきたのは俺達の世代だ!! 俺もそのひとりだ! オマエら若い世代が後からやってきて、それを無茶苦茶したんだろうがぁ~!!」

と相手が男なら怒鳴ったかもしれない。プロフにも書いたように僕にはそういう辛辣で攻撃的な側面もあるのです。でももちろん、ここでそんなことは言いません。それに……。何故か、彼女はそう言いつつもこの部屋を出て行こうとはしない。不快な思いをしたのなら、すぐに出て行ける、それがここのいいところ。つまり彼女は何かを話したがっている、そう感じた。

(そっか、そういうことか…。彼女はこういうところは初めてで、ただ興味本位に訪れたわけじゃないのか。なにか深刻な悩みがあるのかもしれない。それに、考えてみれば彼女の言葉だって怒っているわけじゃなくて、どう対応したらいいのか、解らないだけかもしれない。むしろ彼女はちゃんとした社会生活を送っている分別ある大人の女性で真面目なんだ。だから余計に悩んでいるのか…、なにかここに入らなきゃならない事情があるのか…。だとしたら…)

だとしたら、「僕はこのゆきこさんに逢うために、ココに居るのかもしれない」そう思った。そしてこの300近い部屋の中で、今の彼女に一番ふさわしい話し相手は自分なんだと自惚れた。「M女性のためのSM入門」という大そうなタイトルのブログを立ち上げた。初心者M女性、まだこの世界に足を踏み出せない女性のためのサイトだ。それに前述のチャットルームへの誘い文句を掲げている以上、僕は彼女とちゃんとコミュニケーションとる義務と責任がある。僕は彼女に謝った。

「ごめんなさい。失礼しました。不快だったら謝ります。あなたの話したいことでいいですよ。ちょっとSMから離れて世間話というか、そういうこと話しましょうか」


■もっと見られたい…

その旨を伝え、ふたりは、ゆっくりとお互いの経歴や年齢、住んでいる場所、そんな当たり障りのない会話を30分ほど続けた、そんなころ、

「麻美さんって素敵ですね」

と彼女がチャットしながら、このサイトを読んでくれている様子が窺えた。

(あっ、そろそろかな?)

と思い、話題を慎重にSM方へ持っていくと、しばらくして

「見られたり、縛られたりすることに興味があります」
「このままだと、危ないことしちゃいそうで…」

とゆきこは応えた。

「見られたり…」僕はこの言葉に違和感をまず覚えた。どういうことだろう? 露出系? 羞恥系?よくわからないが、あまりこの手の話題を振ったときに、「見られたり」という言葉を使うM女性は少ない気がした。なので、そのあたりのことを尋ねると、それから彼女は、言葉を選びながらゆっくりと自分のことを語ってくれた…。

話をまとめると、ゆきこは現在30代前半の新体操の指導者で、子供の頃から大学時代まで競技者として活動してきたアスリートだった。有名な大会の出場の経験もある。そんなときクラスメートの男子がある投稿写真雑誌を持ってきてゆきこに見せたという。そこにはゆきこの新体操競技中のあられもないポーズが載っていて、しかもそのレオタードの股間部分はかなり食い込んでいるものだった。そして彼女はそんな自分の写真が男子たちにオカズにされていることを知る。

「最初は嫌悪感しかなかった…」

そう彼女は言った。しかし競技者時代、その後も彼女は、いわゆる“新体操選手の股間を狙うカメラ小僧”に狙われ続け、いつの間にか、彼らのカメラレンズの奥にある視線を強く意識するようになったという。次第に彼らの前で、必要以上にわざと大胆なポーズをとるようになり、興奮している自分に気づく。

「もっと見られたい…、気がつくとそう思うようになっていて、そんなときに撮られた写真がまた雑誌に載って、私のその股間…、よく見るとシミがついていたんです」

当時、付き合っていた恋人には“汗”だと説明し、新体操では競技中ポーズによっては、力が入りすぎてオシッコがちょっと漏れちゃうこともあるんだと言い訳もした。

「でも、私のそれは明らかに違いましたよね…」

と照れくさそうに話してくれた(というかチャットなので僕がそう思っただけかも)。それでも大学を卒業し競技者を引退してからは、そんな自分のちょっとした“みられたい”願望、あるいは実際にやっていたのだから“露出癖”は納まっていったらしい。


■よくレポートで徹夜しましたよね

ここまで聞いて、僕は再び、なんともいえない彼女の本気さを感じた。話し始めの雑談の頃、彼女は大学で理系の学問を専攻していたと聞いていたからだ。僕も大学では理学部化学科だった。文系の人には失礼かもしれないが、同じ大学生といっても、文系と理系では、学生生活は全然違う。一年の頃から、毎週、実験が2、3枠あり、そのすべてを前もって、本を読み、理解して、準備して、実験を行う。実験は大抵午後3限、1時ぐらいから始まり、終わりは決まってない。実験が終わらなければ、6時だろうが7時だろうが永遠に続く。そしてそれが終われば、次の週までにその実験のレポートを提出しなければならない。学生は3年後期から卒業まで、研究室に割り振られ、そこで毎日朝9時前から教授が帰る6時、7時ぐらいまでは、ずっと研究室に篭もりっ放しで実験をする生活。4年になれば、ほとんど夏休みもない。文系の女の子達が4年になれば週1回のゼミに出席すれば後は就職活動なんていうのとは大違い。就職はそうやって研究室でがんばって教授に認められれば、推薦してくれる企業に入るなんていうのが当たり前だった。僕も大学入学したときは、高校でやっていたバレー部を大学でも続けてみたかったが、化学科のガイダンスで、化学科はそんな甘いところじゃない、体育会系の部活はあきらめるよう言われた。音楽系のサークルに入ったが、それもあまりにレポートとかが忙しくて2年になる前に辞めてしまった。ゆきこの大学生活がこれと同じとは限らないが、彼女も

「よくレポートで徹夜しましたよね(笑)」

と言っていた。彼女はそんな中で、新体操をやっていた。これはかなり真剣じゃないとできないことだ。彼女のライバル達は、体育系の学生だったり、体育大学の学生だったりもする。彼女達は、実質的には新体操さえしていれば、大学を卒業できるぐらい優遇されているはずだ。そんななかで彼女は競技を続けていたに違いないのだ。理系のストイックさと、体育会系のストイックさを彼女は両方、こなすことができるような、かなりタフで真面目でストイックな女性だと推測できた。しかも新体操のような芸術系スポーツは、身体を絞り、それを維持し、身体性、芸術性を高めていかなければならないハードなスポーツ。普通ならカメラ小僧のレンズに狙われたくらいで、彼女のような“邪念”が入り込む余地はないはず。それでも彼女はそこに堕ちてしまった。

「見られたいって思って、カメラに向けて大胆なポーズをわざとしたりするようになって、(競技)成績はかなり落ちました」

これがゆきこの本気。僕はそう思った。彼女の中に巣食ってしまった欲望が、それまでのストイックな彼女に何かを植え付けてしまった。男達が自分のことを見て、オカズにしている…、彼女自身そんなことを思いながらオナニーをしたこともあったらしい。


■危ないことしちゃいそうで…

そんな学生時代の彼女の話を聞いた後、もうひとつ、さっき言っていた彼女の言葉が気になった。

「このままだと、危ないことしちゃいそうで…」

競技を引退してかなりになる。なんでまた今、その“みられたい願望”、“露出癖”がぶり返したのか? それを聞いてみた。

「今も指導者を続けているんですけど、最近のブームに乗って、新たに男子のグループができて、その指導も受け持つことになったんです。彼らの前で、うかつにも暑くて、レオタードで指導していて、彼らの視線がすごく気になって…、カメラ小僧に追いかけられていた頃を思い出してしまって…」

なるほどなぁ…。そんな人もいるんだ。僕がこれまで付き合いのあった10数人のM女性達の中にも露出に興奮するタイプの女性はいたけど、それはあくまでもSである“僕の命令”とのセットだった。
支配され従属することに喜びを見出しつつ、羞恥に身を焦がす。これが僕のよく知っているパターン彼女の場合は違う。まず“みられたい願望”ありきなのだ。でも誰にでもそれってあるんじゃ…。

「でもさ、女の人は、程度の差はあっても男に注目されたい、見られたいって思うものなんじゃないの?」

「私の場合は“見られたい”じゃなくて“はずかしいところを見られたい”なんです…。この間、杉本彩さんの『花と蛇』を見たんです。話はお粗末でしたけど、あんな恥ずかしい格好で縛られて、男の人に見られてるって思って…。縛られることにも興味がでてきたんです」


■自分を押さえ込んで生きていくのが当たり前

本気なんだ…と再確認する。彼女はゆっくりと慎重にここまでのことを初めて会った僕に話してくれた。ありがたいことだ。別に彼女はプレイ相手を求めているわけでも、今後SMの世界に挑戦したいという強い意志があるわけではないようだった。こんなことは誰にも言えないし、恋人にもいえない。今まで誰にも喋ったことがないと言っていた。

「普通、こんなこと、自分を押さえ込んで生きていくのが当たり前じゃないんですか?」

という。

「それも、さびしいなぁ…。なんかパートナーとか探して安全にそういう自分を解放する方法もあると僕は思うよ」

と僕は僕なりの意見を言った。ここまでで、もう4時間近く、話し込んでいた。切り上げるべき時間が来たと感じた僕は、ぼくのブログをまだちゃんと読んでもらってないことに思い当たり、

「よかったら僕のサイト読んでみてください。今日は楽しかったです。いろいろ最初はすみませんでした。よければまた話したいです。サイトから僕にメールできますんで、よければ感想でも聞かせてください。」

とチャットを切り上げた。なんともいえない不思議な魅力を持った女性だった。理知的で分別もあり、非常にストイック、なのに“はずかしいところを見られたい”という強い欲望がある。俄然、興味が湧いてきた。是非、彼女とコミュニケーションを続けたいと思った。彼女は、どんな気持ちでこのチャットに入ってきたんだろう…、少しは彼女のためになる話ができたのか、自問してみる。僕は何もアドバイスできなかった。でも…、彼女はこれまで誰にも言えなかった自分の欲望を人に語った。それはきっと、いいことなんだろうと自分を無理矢理納得させ、僕もベッドに入った。


■私の事、どう書かれるのかしら

翌日、昼近くまで寝ていた僕に対して、けっこう朝早い時間にゆきこからメールが届いていた。そんなところにも彼女の真面目でストイックな生活が窺い知れる。

「やった! メールくれた!!」

僕は素直に喜んだ。これでまた彼女と話ができる。


ゆきこ→尚人

尚人様
昨夜は遅くまで、お付き合い頂きありがとうございました。
あの後ブログ読ませ頂きました。麻美さん、素敵ですね
もし、プログの内容通りなら、大胆ですけど、羨ましいです。正直、お話しの余韻のせいか、麻美さんを自分に置き換えて、気がついたら、そのまま、恥ずかしい姿で寝てしまいました。今起きて、ブログ覗かせて頂きましたが、私の事、どう書かれるのかしら、興味があります。
ではまた・・・


うれしい~~!! こういうメールはほんとにうれしい。しかもブログの感想や僕がゆきこのことをブログに書きたいということまで、ちゃんと応じてくれた。

(今回は最初のメールでほぼブログのことだったので公開しちゃったけど、毎回メールを全部、載せるということはしないので了解してください。もしまずかったら削除します。)

僕はすぐに返事を書いた。昨日の話のお礼、まだブログでは全部書き終わっていない麻美の総括的な話、今後のブログの予定、ゆきこのことをどうブログに掲載するか、その方法などをできるだけ詳しく説明した。そしてどうしても気になってしまった『麻美さんを自分に置き換えて、気がついたら、そのまま、恥ずかしい姿で寝てしまいました。』という一文に対して


尚人→ゆきこ

ゆきこ様
それにしても…

「麻美さんを自分に置き換えて、気がついたら、そのまま、恥ずかしい姿で寝てしまいました。」

なんてメールされたら、こっちがドキドキしてモヤモヤしてしまいます!!
見たい! その恥ずかしい姿、僕に晒して欲しい!!
その恥ずかしい姿になる前、何してたんですか!?
どんな格好ですか!?

とか思っちゃいます(笑)。
昨日の最初は、なんか、なかなか話をしてくれなくて、困らせておいて、
今日は、もう僕に対して、こんなメールを送ってくる!!
これもゆきこさんの露出性癖の一端ですね!!
そんなゆきこさん 素敵です! ドキドキします。



なんてことまで書いてしまった。彼女はもしかしてブログを読んで、エッチなことしちゃったんじゃないだろうか? とどうしても聞きたくなってしまった(笑)。不快だったら申し訳ない!!

その応えは聞けなかったけど、メールを何回かふたりで往復させ、その日の夕方にまたチャットで話すことを約束し、彼女と十六夜で話した。


■ラプラス変換を使えば~

昨日のような失敗をしないように、なんとなく世間話をしていて、いつの間にかお互いの大学時代の専門分野の話になり、「シュデリンガーの波動方程式」、「ラプラス変換」、「エントロピーの法則」、「微分方程式」、「近似値計算理論」などの単語が飛び交う不思議な話題で盛り上がる。十六夜で何を僕らは話しているんだ? こんな話しているカップルはたぶん、僕らだけだろうな~と思いながらも、ひさしぶりの理系話を楽しんだ。そして思った。ああ彼女は僕が大学時代に交友していたクラスメートたちと似ているな…、と。

大学時代、僕は理系の女の子たちの擁護派だった(笑)。当時、時代はバブルへと突き進んでいく頃で、「オールナイトフジ」では華やかでキレイな「オールナイターズ」と名乗る女子大学生が話題になっていた。僕の属していた大学の音楽サークルでも、ハデで華やかな女の子たちが時代を謳歌していた。でも化学科の女の子たちは、まるでそういう当時のカルチャーとは無縁で別世界に生きていた。真面目で純情な子がほとんどだった。サークルで一番ハデだったボーカルをやっていた女の子と、僕は付き合っていたが、なんとなく飽きてしまって、結局、化学科の女の子とそれから6年以上付き合い、結婚も考えていくことになる。まあそれは別の話…。ゆきこはきっとそんな僕が、好意を持っていた理系の女の子たちと時代こそ違うが同じような青春を送っていたんじゃないかな…と想像し彼女に親しみを感じた。といっても彼女はそれにくわえて新体操まで真剣にやっていたんだから、それ以上にストイックな青春を送っていたに違いない。

「こんなことばかり話すから、変わり者とか言われちゃうんですよね(笑)」


■痴漢さんに弄られて感じちゃった

彼女も、十六夜という場所と不釣合いな話題で盛り上がった自分に照れているようだった。そんな話を一頻(しき)りした後、僕らは昨日よりずっと自然にSMの話に入っていった。

「私、痴漢さんに弄られて感じちゃったこともあるんです…」

またひとつ、新たなカミングアウトをゆきこは始めた。

「毎回という訳ではないんですが、一度凄い“痴漢さん”に遭ったんです。信号の故障みたいで、電車がゆっくりにしか動かなかったり、すぐに停止しちゃった時、前と後ろの両方からふたりの“痴漢さん”に挟まれて身動きできない状態で痴漢されたんです。パンティをずらされて20分ぐらい直接、アソコとクリトリスを弄られ続けました。最後に小さな声で『ありがとう』って言われて、私はもう立っていられませんでした」

「…それを思い出して、オナニーとかしちゃったこともある?」

「はい…、あります…」

僕はパートナーと羞恥プレイの一環として、電車の中で痴漢プレイみたいなことをした経験はあるが、もちろん痴漢をしたことはない。痴漢モノのAVすら興味がない。むしろ、付き合ってきた彼女達から痴漢に遭った話を聞くと、「感じるわけがない、それに怖くてすごいイヤ」とほとんどの子が応える。その意味では僕にとっても痴漢は敵である。「俺のオンナに何をする!」と腹も立つし許せない。一般にはSMも変態性欲の一種として痴漢と一緒にされることがあるが、明らかに何かが違う気がする。かといって痴漢の犯罪性をとやかくいえるほど、SMも犯罪と無縁ではない一面があることも否定できない。僕はSMのその扉の向こうに行く気はないが、その扉を開けて突っ走っていく人間がいることも知っているのだ。だから余計に痴漢に対してはもどかしい腹立たしさを覚える。まあ一般の人から見れば“同じ穴のムジナ”なのかもしれないが…。

もちろんゆきこも別に痴漢に遭いたいと思って実際にそれを許しているわけではない。十分、嫌悪感もあり、怖いとも思っているし、止めて欲しいとも思っている。なのにそれに感じてしまっている自分にも気づいてしまったのだ。カメラ小僧のターゲットにされたときとほとんど構造的に同じものがそこにある。


■私がここに来たのは…

「なるほどねぇ…。なんかゆきこさんってちょっと危険かもしれないなぁ…。どうしたらいいんだろう安全にプレイできるパートナーがいればいいんだろうけど…」

僕は曖昧に感想を言った。僕はゆきこに危険なものを感じた。それは今も変わらない。一般的というより、これは僕個人の狭量な考え方なのかもしれないが、SMには一般的に支配する側とそれに従属する側による合意された主従関係がある。妄想ならともかく、リアルなSMにおいてはそれが普通だ。多くのM女性は身体的、精神的に特定の相手に支配されることを望み、それに悦びを覚える。しかしゆきこの場合、あまり、そういう主従関係を必要としていない。むしろ不特定多数の男性に自分の恥ずかしい姿を晒したいと考えるタイプのMなのだ。

リアルなSMにおいて主従関係が確立しいている場合、意外かもしれないが、M女性はS男性に守られている。どんなに奴隷扱いされようが、きわどい命令を与えられようが、最終的にSはいつもそれを見届け、本当の危険がMに及びそうになったとき、Sは自分を盾にしてでもMを守る。だからこそM女性はある種の安心感を持って過激なこともできるのであり、それがより主従関係を深めていくことに繋がっていくのだと僕は考えている。ただ、それがすべてのS男性に当てはまるのかと言われればそうでないところが、今のSM界の現状だ。これはあくまでも僕のS観であり、僕の目指すところ。違うS観を持っている人もいるだろうし、それ以前に、そんなこと何も考えていないただの“野良のS男性”(このニュアンス伝わるかな?)も大勢いる。だからこそ、僕はゆきこのM性の中に危険なものを感じたのだ。

そんなことを先の言葉で曖昧にゆきこに伝えると、

「実は…」
「私がここに来たのは…」

と彼女は意外なことを語り始めた。ゆきこの個人情報が特定されないように、あえて単純にいうと、

あるSMチャットのサイトで知り合った10代の女性とSの男性が実際に会い、翌朝、女性だけがホテルの部屋に放置されていたのを、ホテルの従業員が発見した。

それほど大きな事件性はなく、この手の問題は、実は毎日のように起こっていると思われるし、これはゆきこの身近で起こったことではなかったが、ゆきこは自分が指導しているような若い女の子達の日常の中に、そんなことが起こっていることを知り、自分なりにSMのチャットのことを調べてみようと、ここを訪れたのだった。

僕は、「まったくだから“野良(のS男性)”は困るんだよ…」そんなふうに思った。

「自分自身の興味もありました。半々です。結局その女性も私も同じ“変態さん”なんです。だから余計、身につまされて…。どこかで私も同じような目に遭うかも…」

“痴漢さん”と言ったり“変態さん”と言ったり、彼女の言語感覚はちょっと面白い(笑)。
その後、僕らは、チャットの実態やネットコミュニティの危険性などの意見交換をした。

「でも麻美さんだって、尚人さんと出逢わなければ、同じ様なことが起こったかもしれませんよ」

と彼女は指摘した。さすが!! 理知的なゆきこさん わかってる!と思った。まだ、麻美との体験は途中までしか書いてないが、麻美の持っていたそんな危険性も近いうちに書くつもりでいた。

「うん! まったくその通り! 98年ぐらいだっけ? 東京電力の総合職女性の殺人事件があったじゃない。あの時、すごく強くそれを思った! 麻美に『これは麻美だったかもしれないね?』 なんて喋っていたよ」

「最近、また話題になってますね… その事件」

なんかいいなぁ…。こういうところ、ツーといえばカー!という感じ。


■私の写真見たいですか?

昨日に続いて今日もいろいろ話すことができた。年の暮れの夕方からはじめて時間はもう8時をとっくに過ぎていた。彼女は食事をしたんだろうか? そろそろ終わらないと彼女の生活のペースが乱れてしまうんじゃないか? いっきに深くコミュニケーションをとって、熱病のようにさっと退いてしまう、そんな交流よりは、ゆっくり長く付き合っていきたいと考えていた僕は、彼女に無理をさせたくなかった。

話の流れはそれから、カメラ小僧の写真が今でも、ネットの中で使われているというような流れになり、自然な感じで彼女は言った。

「私の写真見たいですか?」
「えっ? 見たいよ。見せてくれるの?」

彼女は十六夜の画像表示機能を使って、一枚の写真をアップロードした。

「見て欲しい、見られたいと思っている自分もいます…」

ドキドキするようなことを言う…。こういうことを言われると、これまでせっかく紳士的に振舞っていたのに、自分の中のSッ気が、ムラムラと湧きあがってくる。なので敢えて、こんな言葉を返してみた。

「僕は、ゆきこさんが、そういう恥ずかしいところを見られたいって思ってる露出癖の女性だって知っていて、ゆきこさんの写真を見る、最初の男なのかな…? 」

「はい… そうです」

「光栄だなぁ~ ありがとう!」

たまんない! 彼女の中で何かスイッチが入っちゃったのかな? 送られてきたカメラ小僧が撮った写真をじっくり鑑賞する。僕は仕事でもプライベートでも写真はよく撮るし、それなりに詳しい。

アップされた写真には、競技中、大きく脚を広げ、上半身を仰け反らせキレイなポーズを決めたゆきこの全身が写っていた。ちょっとスローシャッターで絞りも浅め、なので被写界深度も浅く、どこに焦点をあわせて撮ったのか一目瞭然の写真だった。明らかに、この写真を撮った人間は、ゆきこの股間にフォーカスし、それ以外のところは多少ボケている。加えて顔は、ポーズと手具のせいで半分以上隠れている。

第一印象は、やっぱり思っていた通りキレイな女性(ヒト)だなぁ…。絞り込んで鍛え上げられたアスリートの美しい肢体がそこにあった。顔はわからないけど、ヘアスタイルも僕の好みだった。多くの体操選手は、邪魔にならないよう髪の毛をひっ詰めて固めている印象が僕にはあるのだが、ゆきこのその写真は前髪も垂らしたまま、後ろで緩く結んだだけで、その先は大きくカールされ、やわらかくうねっている。そこにものすごいオンナっぽさを感じた。そんな普通の感覚で見れば、本当にただただキレイな女性のキレイなポーズ。

…でも。僕は知ってしまっている。ここに写っているゆきこは、撮られることを意識し、敢えて大胆に身体を仰け反らせ、脚を大きく広げ、その股間をカメラの前に晒しているのだ。

「見て欲しい! このはずかしい格好の私を見て!」
「この私をオカズにしていいのよ!」
(まあそこまでは思ってないかも…)

そんな思いを巡らせると、この写真はまったく違うものに見えてくる。フォーカスされた股間はピッタリとフィットした薄紫で光沢素材のレオタード(これも僕の好み!)が張り付き、恥丘(いわゆるビーナスの丘)の形をはっきりと見る者に伝えてくる。さらに陰裂(いわゆるワレメ)にそって走る溝を影が一本のスジとしてはっきり写し出している。そして彼女を覆っている薄紫のレオタードには、まるで彼女を縛り付ける縄のように、まるで茨が彼女にまとわりついているように、黒のラインが無尽蔵に走っている。そう考えてしまえば、もうこんなにエロい写真はない! しかも彼女は、そんな写真を僕に見て欲しい!と送ってきたんだ…。そんなゆきこのことを思うと、もう僕はゾクゾクしっ放しだった(笑)。写真、その中の彼女、それを送る彼女、そのすべてにエロティズムを感じた。

とはいっても、そんな僕の劣情をそのまま、チャットで彼女に伝えるのは、なんか憚られた。彼女がそれを求めているのかもしれない、あるいは、そんな気持ちもどこかに少しはあったかもしれない。でも確信が持てず、出会った頃の頑なな彼女の雰囲気も嫌いじゃないし…。結局、僕は写真の感想を、当たり障りのない最初の印象で感じた彼女の美しさと魅力だけを伝えた。

なのでこの場を借りて、あの時の自分の気持ちを書き綴っておいた。どうか、お許しを! そしてもう一言だけ…。

「エロい! エロいよゆきこさん!! 最高だぁ!!」


■撮ってみようかな…

そんな風に写真を見せていただき、話が僕も写真を撮っているなんて話題になったとき、彼女は独り言のように、といってもチャットなんだから、確実に僕に伝えるためでもあるんだろうけど、ポツリといった。

「そっかぁ… 自分で写真を撮るっていう方法もあるのよね…。撮ってみようかな…」

ああ、なるほど…。ぼくもそれはいい方法だと思った。それに僕なら喜んでそれを見る(笑)!

ただもう時間は9時を過ぎ、僕もちょっとやらなければならないことができてしまい、挨拶を交わし、再会を約束して、3時間ほどの会話を終えた。今回も、彼女になにもいいアドバイスができなかったなぁ…と思った。でも別にカウンセラーでもセラピストでもないし、専門家ですらない僕に、たぶん彼女もそんなに期待しているわけではないし、自分でもそんな実力があるとも思っていない。ただ、僕は彼女の役に立ちたいと考えていた。今度、話ができたときには、そうだな…、ハプニングバーとか女性の自縛サイトの話とか、そのあたりの会話ができれば、彼女になにか、いい刺激になるんじゃないかなと思っている。

それでは、この続きがあることを願いながら… 今回はここまで。


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| | 2012/01/12/Thu 23:57 [編集]
コメントありがとうございます
コメントありがとうございます!!
“主従を必要としてない子”さんは 僕のブログの始めてのコメント投稿者です!
このサイトを見ていただいて感謝します。

そうですか…、そういう人もいるんですね…
智子さんとはいろいろ チャットやメールで話を続けてますが、
そういう自分にかなりコンプレックスがあるようです。
今度、話すときに、共感できるって人がコメントをくれたと伝えておきます。
もしよければ“主従を必要としてない子”さん ともいろいろ話がして見たいです。

コメントありがとうございました。

尚人


尚人 | URL | 2012/01/13/Fri 00:07 [編集]
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| | 2012/01/13/Fri 00:37 [編集]
Re: タイトルなし
あれ?主従を必要としてない子は、コメント非公開になってますよ?
本人には見れるのかな?w
こうすると・・・ 基本、僕のコメント、他の人には何言っているか解らないですねw
でも 非公開でいいんですよね もし公開するなら、こっちでも直せますがどうします?
尚人 | URL | 2012/01/13/Fri 00:41 [編集]
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| | 2012/01/13/Fri 22:25 [編集]
もしかして
十六夜きてくれた?
離席していてすみません
よければ、また入ってください 
うしろのつきです
尚人 | URL | 2012/01/13/Fri 22:31 [編集]
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